POWER ENDURANCER SUZUKI GSX-R GK71B CLUB

～当時の雑誌から～

F-3挑戦レポート俺は英雄になりたいっ!!
ライバルは清水国明！
-第五戦筑波大会-
ノービスF3ライダー／安藤　佳正　メカニック＆監督／大田　安治

～オートバイ　1984/8月号 126p-128p より～

　去年あたりからロードレース。それもF-3レースの人気が以上なほど盛り上がっているよね。
　その中で活躍した山本浩生や宮城　光なんかはB級ながらスター扱い。
「う～ん、カッコイイなあ」と思う人はすごく多いだろうし、本気で「オレもレースに出たい！」と考える人も少なくないはず。
　実際のところ、オートバイ誌外注スタッフの安藤佳正も「レーサーってカッコイイ！女にモテる！」というのもレースを始めた動機のひとつなんだ。
　ところが、いざ出場となるといろいろ面倒な手続きがあったり、お金がかかったりで実際にやってみないとわからない事ってのがすごく多く出てくる。
　そこで、「全日本選手権第５戦筑波ロードレース大会」からGSX-RでノービスF-3クラスに参加している安藤佳正（ライダー）と大田　安治（監督）によるナマのレポートをお届けしよう！というわけです。

　まずはレースのムードを知ってもらうために、デビュー戦の様子をお話しましょう。
　ノービスF-3の決勝は5月13日の日曜日。ところが決勝に出れるのは筑波の場合30台で、エントリーが144台！を30台に絞るのが前日の土曜に行われる予選であります。この時は9日の水曜日からレース出場者のために練習時間がとってあって、お金と時間に余裕のある人は火曜の夜あたりからサーキットのそばのホテルなんぞに泊まり込んで水曜30分2回、木曜30分2回、金曜30分1回の練習(ノービスF-3の場合) に集中するわけです。
　まぁ多くは木曜から、モリワキなんかは金曜から走り出すんだけどね。

不安が枕のレース前夜

　安藤の場合は仕事の都合で金曜の夜にサーキット入りして、大田監督からタダでもらったライトエースの中できゅうくつそうに寝て、いきなり本番。このへんの心理を本人に語ってもらいましょう。
「試合とかテストを経験した人ならわかると思うけど、ノドから胸にかけてなんとなくモヤモヤした感じを抱きながら走る筑波までは遠く感じたなぁ。練習量は不足してるし、いままでのベストタイムは13秒前半だし、スリップタイヤ付けたのも初めてだし、選手受付だの、レース前の車検だのも初めてなもんで、どうやればいいか全然わかんない。ボクの顔には『不安』の文字が浮き出していたと思うよ。
　一緒に行ってもらった上木(今月号のいじわるコーナーの鉄人です)はレースのことなんかまるで知らないし、大田監督は予選スタートの3時間前にならないと来ないことになってるから、心細いことこのうえなし。
　結局朝までロクったまま眠れなかったな。」

手続きあれこれ

　次の朝8時ごろに選手とメカニックの受付け(運転免許証とMFJライセンス、参加受理証、健康保険証、健康管理カード、改造申告書の6点を持ってくだけ)を済ませて、次は車検。
　車検といっても陸運局の車検と違って、レースをしても安全かどうかを見るもので、点検個所はステップ、ペダル、ホイール等のガタ、ハンドルの切れ角(20度以上)のほか、ドレンボルトのワイヤーロックやヘルメット、ツナギ、ブーツにグラブまでチェックされる。時間にすれば2～3分なんだけど、けっこうしっかり見てて、ヘンな部分があると「ハイやりなおし！ここ直してもう1回持っておいでいで」と言われるわけ。安藤もゼッケンのステッカーがモトクロス用で、ロード用よりも少し小さくてクレームがついた。モトクロス用とロード用が違うなんて知らないよね。フツーは。
　で、車検にパスすると「車検合格証」をタンクの上にベタッと張られて、出走を待つんだ。

予選は600秒の闘い！

　予選は144台を4つの組に分け、各10分間(たったの！)計測し、タイムの良い順で通過者、スターティンググリッドを決めるしくみ。
　10分とすると筑波じゃ6周がいいところ。タイヤをあたためるのに1周、肩ならしに2周使うと、しっかり走れるようになるのは3周めくらいから。
　だからF-3に限らずノービスのレースってのは予選が「勝負」なんだよね。
あんど「予選通過の最低タイムは前の時(第2戦筑波)で11秒前半だから……今回は10秒くらいかな？」
おーた「路面温度も上がってるしマシンもライダーもレベルアップしてるから9秒の前半までいってもフシギじゃねーよ。ま、お前の今のタイムじゃムリだから、予選の緊張感を味わって、うまくタイムアップして11秒が出りゃイイんじゃない？」
あんど「僕と同じ予選4組に清水国明がいるんだよね。あっちはモリワキCBRだし、練習量も多いし……」
おーた「お前、国明に負けたらひどいよ。お前のくさーいクツ下のスープ飲ますよ！」
あんど「……負けらんない！」
　スタート30分前からもう一度マシンのチェックをして、ウォーミングアップ。調子の悪いところは全くなし。あとはライダーのウデしだい。
　ゲートで待ってると「はい3組目はピットロードへ」とオフィシャルの声がかかって「いよいよ」となります。
おーた「速いヤツに付いて引っ張ってもらえりゃイイけど、ムリすんなよ！それとコーナーの突っ込みすぎだけは絶対にするなよ！」
あんど「……う、う、ん……」

ベストタイムは5周め！

　目を3角に吊り上げ、ヒザをガタガタさせてた安藤も、無事にピットロードを走り出る。
　太田監督はストップウォッチとラップチャートを持って、計測開始。2周目からのタイムは1分14秒14、13秒26、11秒89、12秒13というもの。
　目標の11秒台はとりあえず出たし、転ばなかったから上出来ですな。

予選通過への道は遠いっ！

　しばらくして予選結果が出まして、公式タイムは1分11秒86。144台中60位くらいかな？
と思ったら大マチガイ。なんとケツから数えてすぐの125位だもんね。予選通過ラインは1分8秒31！レベルアップがあまりにも厳しいのですよ。
あんど「く、くやしいっ！……でも清水国明には勝ったもん。アッチは12秒台だもん……」

明日のために…

　結局「予選落ち」に終わったけど、参加することによって得た知識、経験はひとことで語れないほど多かった。2戦目からはグッと余裕も持てるもんね。これからですよ、こ・れ・か・ら

ハガキ募集！

　さて、来月から「あんどー・おーたのF-3レポート」というコーナーを始めます。F-3に関する質問があったら「F-3レポート」係までどんどん送っておくれ！

これがアンドーGSX-Rの実態だ！

　ボクのGSX-Rはレギュレーションに合わせて造ってあるだけで、エンジン関係はどノーマル。
でもノーマルだと走るたびにエンジンをバラす必要はないし、オーバーレブにもそれほど気を使うこともないので、ボクみたいに専属の優秀なメカニックのいないプライベーターにはたいへんありがたいね。走りにもそんなに不満は感じないよ。
　でもこれはGSX-Rだからで、もうCBXとかZ-GPがノーマルで予選を通過できるというレベルじゃなくなりつつあるので、あしからず。とりあえず今の状態は右下の表の通り。

(1) カウル 　カスタムクラフト滋夢製。23000円。形状はノーマルでFRPで作り直したもの。ボクのは特製で、ケプラーの裏張りがしてある。

(2) シート 　カスタムクラフト滋夢製。45000円。もともとはボクのCBRについてたのを手直ししたもの。
　カウルとシートはカスタムクラフト滋夢(03-929-1677)の和田さんの御好意で造っていただきました。和田さんアリガトネ！。

(3) タイヤ 　ダンロップのスリックタイヤ(KR133)。前後で約27000円。これは風魔プラス1(03-948-7123)で入れてもらっています。

(4) オイル 　エンジンオイルはモチュール300V(2lで6400円)。ブレーキオイルもモチュールDOT5(0.5l・2500円)。これも風魔プラス1で入れてもらっています。

(5) その他 　レースのレギュレーションに合わせてライト、ミラー、ウインカー、チェーンケースなどの不必要なものは取りはずし、エンジンオイルのドレンボルトには、小さい穴を開けてワイヤーでロックしてあるんだ。
　これらは自分でやったので、ワイヤーなどの細かい部品代がかかっただけ。

(6) レース時に必要なもの 　ガソリン(ハイオクで160円／l位。レースガスで220～240円／l)は公式練習から予選までで20l用意したよ。あとゼッケン代に840円かかった。

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